4K放送に思う

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4K放送に思う ~ 人間はどれだけ見分けがつくのか? ~

かつて、テレビという未知なる機器がボクたちの生活に入り込んできて、そしてボクたちは大いなる娯楽を得ることが出来、生活は大きく変わりました。大人も子供も、すべてはテレビ中心の生活サイクルになったと言っても過言ではないでしょう。「今日は何時から**番組があるから、それまでにお風呂に入ろう」といった類いの会話が家族の中で交わされていた訳です。今なら予約録画もあれば見逃し配信もあって、ボクたちの行動は左右されずにすみます。それでも、あの時代は不自由さよりもテレビを観れる喜び、ワクワク感の方がずっと大きかったのです。

やがてテレビは白黒からカラーへとアップグレードされ、画面は現実の色と変わらないリアルさになっていきました。カラー画面から受けるインパクトは絶大で、白黒画面に比べて感動の度合いも一段と増したように思いました。

それ故に、こうした技術の進歩は、ボクたちの夢をさらに膨らませ、「もっと奇麗な画面を」とテレビメーカーに期待したのです。その後のテレビに関係した製品や技術、例えばビデオデッキの出現や、衛星放送やハイビジョン放送、そしてインターネットと連携した光テレビなどは、ボクたちをアッと言わせるほどの驚きをもって期待に応えてくれた訳です。

ところが、どんなことにも言えることなのでしょうが、そうした新製品や技術の進歩は、今やボクたちが望む以上のところまで進んでしまい「こんな製品は贅沢」とか「こんな機能は必要ない」といったレベルまでメーカー本位に進められてきたようにボクは個人的には感じていす。
思うに、こうした技術や機能の向上はイノベーションという横文字(日本人は横文字に弱いですから)の名のもとに、「前進あるのみ」で進んできた現実があります。このままのペースで進んで行ったら、その行き着く果てといえば、ボクは「人間が何もする必要のない」ところまでだと思います。
現実に、自動車のケースを考えれば、センサーによる制御技術を使って自動運転車が現実化している訳ですから、ある程度先が見えていると言えるでしょう。

「自動車を運転するという楽しみ、喜びは何処へ?」と考えると、本末転倒のような気がします。
或いは、ボクの趣味のひとつであるオーディオの分野に置き換えても、すべて自動で音楽が楽しめるなんて、想像しただけで退屈なことだと思います。まさに邪道としか言いようがありません。

お気に入りのレコード盤をレコードジャケットから取り出し、ターンテーブルにセットして針を下すという工程、つまりこうした「一手間」が、ボクらにとっては何とも言えない至福の時間なのです。
人間の行動はすべて理に適っているとは限らない訳で、オーディオの場合は特にそんなことを感じています。

話はチョッと横道に逸れてしまいましたが、本来のテレビの話題に戻しましょう。
つまり、テレビに関してはユーザーの要望は既に充分に達成されていて、これ以上の機能は必要ないとボクなどは思っていた時代がありました。2010年代の頃だったと思います。
画質もきれい、性能も充分、機能も「かゆいところに手が届く」的な充実ぶりだったからです。

ところが、総務省を中心にNHK、各民間テレビ局、そして各テレビメーカーが一体となって4K8K放送の推進を始めたのが、2010年以降でした。その先には2回目の東京開催のオリンピック(注1)を見据えていた訳です。何故なら、1964年の一回目の東京オリンピックのときは、各テレビメーカーは衛星放送、カラーテレビという二つの新技術をセールスポイントに「東京オリンピックを自宅のテレビで」をキャッチコピーに宣伝し、普及につなげたという実績があったからです。

しかしながら、2回目の東京オリンピックのときは4K8K放送を武器に4Kテレビ、8Kテレビの普及を総務省、メーカーは目論んだのでしょうが、結果は思ったほどの普及には至らなかったようです。
それは何故だったのか?結論から言えば、ユーザーは4Kテレビ、8Kテレビほどの高画質を望んでいなかったからだとボクは思っています。大型テレビまでは憧れだったのでしょうが、画質については従来のハイビジョン程度で充分だったのだと思います。

更に、4Kテレビ、8Kテレビの普及には高いハードルがあったのです。ボク自身も、一時期自宅テレビの完全4K化を目指したことがありました。しかし、4Kチューナー内蔵テレビまでは購入したものの、配線コードや分波器、分配器などの接続部品もすべて4K対応のものでないとダメということが、準備の段階で明らかになり、途中挫折したのです。
ですから、4Kチューナー内蔵テレビを買ったものの、実際に4K放送を4K画質で視聴しているのかどうかは、未だに定かでないのが実状です。感想としては、非常に複雑で、手間と費用もかかり、専門的な知識も必要でしたから、大々的に普及するには最初から無理があったのだと思います。

更には、4Kテレビを販売することだけが先行してしまい、メーカーや販売店側の情宣活動、アシストが不十分だったのだと感じています。費用対効果の面でも現実的ではなかったのでしょう。

そんな矢先、今回の民放のBS4K放送撤退のニュースです。つまり、4K放送の免許更新時期が2027年に訪れるため、更新するかどうかを決めなければならない訳で、状況的には民放キー局はBS4K放送から撤退の可能性が高いというニュースなのです。
ボクが新聞報道でハッキリと知ったのが、2025年11月の朝日新聞でしたが、2024年3月の時点でスカパーが4K放送を既に終了しており、WOWOWも2025年2月末で同じく終了していましたので、「民放BSもいつかは・・・」という予測はしていました。

要するに、総務省をはじめとした主催者側の先走りで、ボクたちユーザーは押しなべてそれに踊らされた訳です。従来のハイビジョン、フルハイビジョンテレビで充分だったのを、無理やり4Kテレビにシフトを迫られた方々も、ボクを含め多かったのではないかと想像しています。

この4Kテレビに関して思い起こせば、次のようなことが指摘できると思います。
ボクの記憶では当初、普及の第一段階で、あたかも4K対応テレビさえ買えば、4K放送が開始された暁には4K放送を観ることが可能であるようにセールスされていた記憶があります。ところが実際は、4K対応テレビだけでは4K放送番組を4K画質で観ることが出来なかったのです。そのカラクリは4Kチューナーを追加するか、4Kチューナー内蔵テレビを新たに購入しなければならないということです。今にして思えば、原理、理屈はそうなのですが、あの時点で4Kに関する知識はユーザーは皆無でしたから、気が付かなかったのは当然だと思います。店側の説明もその点があいまいで不十分だった気がしています。

多くのテレビメーカー、放送局が、4K放送の計画実施によってもたらされる業界の盛り上がり、期待感、そして同時に4Kの高画質、高機能に対するボクたちが抱いたワクワク感は、いったい何だったのでしょうか。関係業界にとっては期待したほどのユーザーの反応がなく、設備投資などの出費ばかりがかさみ、4Kに於いては赤字続きだった訳です。惑わされたボクたちユーザーもまた出費しただけの恩恵を受けられないまま「4K劇場」は幕引きとなってしまいそうです。

振り返るに、多くの電化製品、特にAV(オーディオビジュアル)製品やパソコンの周辺機器等の世界(分野)では、登場しては消えて行くという現象が多々あるように感じています。古くはビデオ製品やその記録媒体(VHS、βビデオテープ、レーザーディスクなど)は一世風靡しながらも、惜しまれつつその姿を消して行きました。再生機器はとっくの昔に故障して、ボクの手元に残ったのはVHSやβビデオテープなどの記録媒体だけという悲惨な状況を何度も経験してきました。再生したくても再生機器はメーカー側が既に生産終了で手に入りません。中古市場という手もありますが、筆者は以前ネットでMDデッキの中古品を購入した経験がありますが、製品の状態はイマイチで信頼性は期待できませんでした。

このように、多くの製品が製品としての持続が短命のため、ボクたちユーザー側は常に置き去り状態になってしまうことが多いのです。今回採り上げた4K放送の件も、今まで述べてきたことと共通している訳です。
要するに、4K放送に関して言えることは、ボクたちはプロが求めているような高画質を、テレビジョンに求めていないということなのです。4Kもフルハイビジョンも区別がつかないのが本音です。
より良い製品を作るというメーカー側の努力、姿勢にはボクは感謝し歓迎しますが、必要性に乏しい装備や無駄な機能は省いていただきたいというのが正直な感想です。

噂では、ブルーレイドライブの技術及び製品も一部のメーカーで生産中止、乃至は近い将来生産の終了を考えているとの情報も耳にするところですが、いまのボクは「ブルーレイ、お前もか!」といった心境ですネ。

最後までお読みいただきありがとうございました。
from DaVinci-like

<追記>
実は、ボクはこのような投稿を書いているときなどは、ストリーミング再生でお気に入りの音楽をかけながら作業をしている、いわゆる「ナガラ族」です。出来ればレコード盤で音楽だけに集中したいところなのですが、昭和前半生まれのボクのような年代になると、時間が勿体ないということが優先されるのです。やりたいことが沢山あって「一日が30時間くらいあったらいいなー!」と常々本気で考えています(苦笑)。

(注1)2度目の東京オリンピックは2020年開催予定でしたが、実際はコロナウィルスの流行で翌年の2021年7月に開催されました。

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