やっぱり、あの頃のジャズがいい

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昔と今、そして何となく「置いてきぼり感」

最近の若い人たちの音楽事情、つまり、現在どのような音楽が流行っていて、どんなミュージシャン、グループが活躍しているのか。そう言ったことを今のボクはまったく分からなくなってしまった。
まさに「時代に取り残された」とはこのことを言うのだろう。NHKの年末番組「紅白」は、もう何十年も見たことがないし、新聞などで出場者の名前を見ても、90%は分からない有り様だ。
邦楽系は以前から疎かったのは認めるとして、洋楽系はある程度自信があったのだが、それでもこの状況だから、時代の流れは益々スピードアップしているように感じる。
日頃は、ニュース、天気予報、そしていくつかの決まった番組しかテレビを見ないので、当り前と言えば当り前なのだが。
とは言え、別段悲観はしていない。でも、何となく「置いてきぼり感」は否めない。

かつて、私たちがフォークだ、ロックだ、ニュー・ミュージックだと騒いでいたあのころ、自分たちの親も、現在の私が味わっているような「置いてきぼり感」を、同じように味わっていたのかどうか分からないが、もしそうだとしたら、何とも申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
ただ、言い訳がましいが、あの時代は自分たちの世代と親の世代とでは、まったくの隔たりがあった訳ではなくて、重なる部分も多々あったように思う。例えば、親たちも知っていて、私たちもファンであるような、共通する(共感できる)歌手やグループがそれなりにいたように思う。

ところが、いまは完全に世代間はかけ離れていて、共通項がないように感じる。これは音楽に限った現象ではないように思える。例えばネット社会特有の流行の急激な変化と、尚且つエンターテインメントの裾野が昔よりもずっと拡がったことなどが主な要因ではないだろうか。要するに年寄りには解りづらくなったということだ。とりわけ、アーチスト名、グループ名がとても長くなっていて意味不明なこと、よって覚えられない、親しめないの「負のスパイラル」にボクなどは陥っている。「置いてきぼり感」は否めないようだ。

困惑

その結果、どんなに足掻いても、若い世代の流行には着いていけないことを悟ることになる。知ったかぶることはできないから、そうなると残された道はただ一つ、開き直るしかない。ボクにとっての開き直りは原点回帰すること。
つまり、背伸びしても若い世代の音楽に着いていけない訳だから、相互理解ではなくて、相互干渉しないというネガティブな選択肢をとることになる。残念だが、当たらず触らずの平和的解決というところが無難な落としどころだろうと考えている。
ボクの場合の原点回帰は、やはりクラシックとジャズを中心のミュージックライフに戻るということ。

振り返れば、クラシックもジャズも半世紀以上の付き合いになる訳で、この先も脇目も振らずにこのカテゴリーの音楽を聴いて行こうと思っている。何しろ、この両者は奥が深くて、ゴールは無限に感じられるから。

ジャンルを超えて音楽を聴いていたあの頃

そう!思い起こせば、若い頃は洋楽邦楽問わず、いろいろなジャンルの音楽(演歌、歌謡曲は除く)に興味を持っていた。今との違いは、私たちはいろいろなジャンルの曲をたくさん聴いて好き嫌いを判断していたことだろう。あの時代は、いわゆる「スタンダード(ナンバー)」という名曲が比較的ラジオで流れていたから、自然とメロディーを覚えてしまった訳だ。こうした環境というのは意外とバカにならないものだと思う。


小さい頃はラジオぐらいしか情報を得たり、音楽を聞く手立てはなかったので、半強制的に(?)聞かされていたという受け身の側面はあったけれど、ボクはそんな状況を寧ろ幸運だったと思う。
ところが、いまの時代はいろいろな選択肢があって、自分好みに固執することができる。一見自由で喜ばしいように思えるが、このことは逆に選択肢を狭めていることにもなる訳で、ある意味不幸と言えるのかも知れない。

「スタンダード(ナンバー)」は素晴らしい

音楽の歴史、特に20世紀以降のミュージックシーンにおいては、多くの才能ある先人たちによって「スタンダード(ナンバー)」と呼ばれる名曲が数多く作られてきた。これは、いわゆるクラシック音楽とは別のカテゴリーで、ポピュラー音楽として世界の人たちに愛されてきた音楽だ。
蛇足ながら、「スタンダード(ナンバー)」というのは、もともと「スタンダード(ナンバー)」として作られたのではなくて、長い時間を経て結果的に「スタンダード(ナンバー)」として多くの人に認められた楽曲のことだ。

ボク個人の好みで例を挙げるとすれば、「ホワイト・クリスマス」「枯葉」「ムーン・リバー」「ラウンド・ミッドナイト」「引き潮」「エデンの東」「マイ・フーリッシュ・ハート」「黒いオルフェ」など切りがないが、実は「スタンダード(ナンバー)」の厳密な定義はないので、人によって選曲は異なるかも知れない。ちなみに、映画音楽から「スタンダード(ナンバー)」になっていったケースが多いようだ。これは楽曲が優れているのもさることながら、スクリーンというビジュアルの効果も加わっての相乗効果のお陰と言えるだろう。

このように、この時代は次から次と上記に挙げたような印象深い名旋律が誕生していた。
ところが、最近はそうした名曲になかなかお目に罹れなくなったのはどうしてだろうか。
その理由として、こうした名旋律はこれまでに、ほとんど出尽くしてしまったからという説を「名旋律枯渇論(?)」と命名して、ボクは勝手に唱えているのだが、その真偽は如何なるものか。

いずれにしても、「スタンダード(ナンバー)」と呼ばれている曲は、世界中の音楽ファンに一過性、いわゆるブームではなく、長いこと愛されてきた実績ある名曲だから、企業における「技術伝承」と同じように、後世の人たちに伝承されるべき「人類の宝」だと思う。しかし、現状は私が望むようにはなっていないようで、何とも寂しい限りだ。時の流れと流行(ブーム)と人間とは、ときに残酷だと思えることがある。

ジャズの好さがチョッとだけ解るように

このように自分自身が歳を重ね、これまでの音楽遍歴を遡ってみると、ときどき「音楽と年齢の関係」について考えることがある。
つまり、言い換えれば「年相応の音楽ってあるのか?」という疑問だ。

これまで我々は、時代の流れに沿った流行りの音楽を、常に受け身の形で聴いてきた傾向がある。
それは、文字通り流行に流されていた訳で、新しい音楽を理解しないと、自分一人だけ取り残されてしまうのではないかという、一種の恐怖感を伴っていた。しかしながら、一定の年代に達したとき、受け身ではなくて自らの意思(好み)で音楽を選ぶことができるのだと気付く。仮に自らの好みが、世間の流行(ブーム)に逆行していても、何ら問題がないことを悟るのだ。

個人的な話をすれば、ボクは50代後半になって、ようやくジャズを聴ける年齢になったと実感した。それまではあまり、音楽と年齢の関係など考えたこともなかったから、自分でも意外な感じだった。若い年代の人はとかく周囲を気にするので、流行に乗っかっている方が安心なのだろうが、一定の年代になったら、音楽という趣味娯楽の世界なのだから、流行に左右されない自分の意志を持ったらどうか思うが、かと言って無理強いはしたくない。

ジャズとクラシック


さて、思うにジャズにくらべクラシック音楽というのは、年齢はあまり関係ないようだ。何故なら、ボクの経験からすると、通っていた小学校では帰宅時に、チャイコフスキーの「アンダンテ・カンタービレ」やドボルザークの「家路」を校内放送でかけるのが恒例になっていた。そして、その2曲をいつも楽しみにしていたのだ。その時は、何の理屈も強制もなくクラシック音楽を好きになったものだ。それ以来、現在に至るまでクラシック音楽は身近な存在になっている。だが、断っておくが、これはあくまでもボク個人の見解であることをお忘れなく。

一方、ジャズに接するようになったのは高校生になった辺りからで、その頃は只々興味本位で聞いていただけだ。恐らくジャズの奥深さなど感じ取れていなかったのだろう。それは、その頃ジャズのレコードを買っていなかったという事実からも推測できる。

やがて、ジャズ初心者のボクは、マイルス、モンク、コルトレーン、ビル・エバンスらの、ジャズの定番と呼ばれるアルバムを聴いているうちに、ジャズの迷宮に紛れ込んでしまうのだ。とは言うものの、前述使途ようにそこに至るにはかなりの時間を要したことになる。この辺りの経緯は、以前別ブログ「新井くんへの謝罪と感謝 〜Jazz vs. Classic 〜」に投稿しているので、興味がありましたら参照ください。

新井くんへの謝罪と感謝 〜Jazz vs. Classic 〜

音楽における「流行り廃れ」

そんな訳で、ボクとジャズ、クラシック音楽とのながい付き合いは、このようにして始まったのだ。
その後、この二つのジャンル以外の音楽も、もちろん並行して楽しんできたが、ジャズとクラシック音楽は、俗に言う「流行り廃れ」とは無縁の音楽ジャンルだということを感じるようになる。

クラシック、ジャズを聴いているときは、雑念はほとんどなくて穏やかに聴くことができる。要するにリラックスできて、自分のテリトリーにいるという安心感を得られるのだ。これこそ、人間が音楽に求める基本的な要素な訳で、「流行り廃れ」を感じさせない要因になっているのかも知れない。

それに対して、ストリーミング再生で、時たま昔懐かしいロックやニュー・ミュージックなどをかけることがあるが、そんな時、当然に懐かしさは感じるが、何故か気恥ずかしいという思いや、最後まで聴けなかったり、思わずボリュームを一段二段下げてしまったりする。そんなときは「嗚呼、ロックもポップスも、そしてニュー・ミュージックも、ボクの中では終わったな」と感じてしまうのだ。

勿論、ロックやニュー・ミュージックのなかに、ボクにとって「永遠の名曲」と呼べるようなナンバーもたくさんある訳だが、ほとんどが「もう終わったな」に分類されてしまっている。

こんな例があるので紹介しておこう。
「飛んでイスタンブール」というヒット曲で有名な庄野真代さんの隠れた名曲に「アデュー」というバラード曲があって、その一番の歌詞に
「若くはないは もう昔のように 心が揺れても きっと飛び込めはしない」
というフレーズがある。
まさに、この心境が「音楽と年齢の関係」を考える際にピッタリ当てはまり、思わずボクは頷いてしまうのだ。

若かりし頃に、あれほど胸が熱くなった曲を、うん十年ぶりに聴いたとき、「嗚呼、懐かしい」と心が揺れることがあっても、いまの自分は昔のように胸が熱くはならない、といった心象風景が目に浮かんできそうな一節だが、これと同じような経験、誰にも一度や二度は味わったことがあるのではないか。

余談だが、事例に挙げた庄野真代さんの「アデュー」は、私にとっての「永遠の名曲」の一曲に入っていて、いつの時代でも色褪せない極上のバラードだと思っている。

ジャズと言っても、あの頃のジャズがいい

さて、ジャズといっても、さまざまなスタイル(ジャンル)がある。ニューオリンズにルーツをもつジャズという音楽は、もともと「自由と即興」が真髄だから、絶えず変化しているのは当たり前で、時代によって演奏スタイルもコード進行も様々だ。歴史的に見れば、多くの偉大なアーチストが紆余曲折を繰り返しながら進化してきた音楽ジャンルと言えるだろう。半世紀以上のジャズ愛好歴があって、こうしたジャズ絡みの投稿を知ったかぶって書いているボクにとっても、ジャズの世界は未だ「カオス」そのものだと思える。

その昔、私たちジャズファン(私だけかもしれないが)は「どの時代の誰の演奏が好み?」といった内容の会話を交わしたものだ。何故なら、かのマイルス・デイビスやジョン・コルトレーンでさえ、時代時代でその音楽、演奏スタイルを変化(革新)させてきたのだから。
マイルスの「ビッチェズ・ブリュー」やコルトレーンの「至上の愛」辺りのアルバムと、それ以前のアルバムではご存知のように、彼らの演奏スタイルも楽曲のコンセプトも、すべての点で評価が分かれていて、まったくの別人の演奏に思えるからだ。

マイルスの「ビッチェズ・ブリュー」
コルトレーンの「至上の愛」

その意味で言えば、ボクの現在のジャズ嗜好はモダン・ジャズと呼ばれる時代のマイルス・デイビス、ビル・エバンス、チェット・ベイカー、ケニー・バレルあたりが、月並みだが聴いていて心地よいし落ちつくのだ。若かりし頃は、「新しいもの=優れたもの」「古いもの=ダメなもの」といったレッテルを即座に貼っていた。しかしながら、どんなに抗っても、強がっても、人は年をとり老いて行く訳だから、「新しいものは何時までも新しいもの」でいられないことに気付く。そして同時に、「古いもの必ずしも悪くはない」ということにも気付くのだ。

昭和生まれの私などは心が和むアルバム
歳相応の音楽と言える
チェット・ベイカーのCHET

本文中のボク自身の原点回帰とは、つまり古いものにも目を向けようと意識することでもあるのだ。
だから、必然的に歳相応の音楽を求めるようになるのだと、ボクは年齢を重ねて思うようになった。
こうした微妙なニュアンスは、若い頃は気が付かないし、どうしても認めたくない考え方だったが、いまでは素直に認められる確かな経験則だと思う。

それにしても、「歳相応の音楽ってどんなの?」と改めて問われても、本文中でふれた「スタンダード(ナンバー)」と同様に、確たる定義がないので言葉に詰まるのだが、具体的なCDアルバムを挙げることはとても容易なことだ。
こう言う事って、日々生活しているとよくあることだよネ!?

<筆者が選んだ歳相応のジャズアルバム>

昭和の前期、中期生まれぐらいの人なら、その佳さをご理解いただけるだろうと思う推薦盤。
筆者の好みがかなり入った選出になっているが、6枚ともジャズの定番中の定番なので間違いないだろう。聴いていただければ、どれもご満足いただけるアルバムの筈だ。結果、本文の内容がご理解いただけるのではないだろうか。
なお、先入観を持たれないように、筆者の野暮な解説は敢えて省略している。

  • ① ビル・エバンス・トリオ  Walts for Debby
  • ② ジョン・コルトレーン・クァルテット  Ballads
  • ③ ジム・ホール CONCIERTO
  • ④ マッコイ・タイナー  NIGHTS OF BALLADS & BLUES
  • ⑤ デイブ・ブルーベック & ポール・デスモンド  The Duets  
  • ⑥ キース・ジャレット  The Melody At Night, With You    

最後までお読みいただきありがとうございました。
from DaVinci-like

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